
海外生活をしているとたまに日本食を食べたくなる事は,当然ある。以前中西部の田舎街に住んでいた頃は、日本食にありつくのは一苦労だった。たまの休みに日本人留学生達と何時間もドライブしてシカゴ郊外のヤオハン(今は別の会社になっているようだが)に行く事もあった。とはいえ、都市部なら日本食にありつく事は全く難しくはない。米国では日本食はかなりメジャーで、オサレな高級食として確立されている。ボストンにも日本食レストランはたくさんあるし、日本食材を売っている店もいくつかある。魚介類は築地直送のものですら手に入れる事ができるので、その気になれば毎日日本食で暮らす事だってできる(そしてそういう人も結構いる)。
たまに自宅で日本食を作る時には、日本の飯碗でご飯を食べたいものだ。僕が使っているのは柳宗理の磁器の飯椀。やさしい曲線の椀、潔い白無地に青い丸紋が描かれている。静謐な印象を与えながらも日常に使う事を前提としたデザインである。他にも同じシリーズでいくつかでているようだ。機会があれが是非手に入れてみたい。
柳宗理 和食器シリーズ 丸紋 飯椀

今、表の気温は−13度。湿度や風による体感気温はー20度近い。これだけ寒いと、暖かい家の中で窓の外の雪などを眺めながらウォッカをのみつつ暖かいシチューなどを食べるのは幸せな事だ。煮込み料理に使うのはこのルクルーゼのココット。大学の寮を出てアパート暮らしを初めたときに最初に手に入れたものだ。
無駄なものなど一切ないシンプルなこの琺瑯の鍋は、"これこそ鍋"といった存在感がある。ずっと昔から厨房にいたような佇まいだ。鋳鉄と琺瑯とその重い蓋で煮込みに威力を発揮してくれるプロも使う定番の鍋で、何代にもわたって使っていけるものだ。今使っているのはココット・ロンド 20cm オレンジ
一人で食べるときによく作るのは、じゃがいもやたまねぎ、マッシュルームなどをソーセージととり肉といっしょに大量の白ワインでひたすら煮込み、ダイストマトを放り込んでさらに煮込んだシチュー。味付けは岩塩と胡椒だけ。水は入れないか、入れてもグラス一杯程度。全部ルクルーゼの中に入れてとろ火にかけておけば後は鍋が勝手に仕上げてくれる。まあ料理とも言えないごった煮なのであまり人には作らないけれど、シンプルな味が気に入っていて、ルクルーゼで作るととても美味い。
(ココット・ロンド 20cm オレンジ

最近、初めてスーツケースを購入した。調査旅行などではタフな環境に行く事が多かった事もあり、機動力を重視してバックパックを使ってきたけれど、大事な機材やデータを預かる機会も増えてきたのでスーツケースを使ってみようと考えた。
選んだのはゼロ•ハリバートン。頑丈無比なアルミケースで、NASAが月の石を運んできた等の有名すぎる逸話は今更紹介するまでも無いだろう。ピックアップトラックの荷台に放り込まれ、バスの屋根から投げ落とされ、ロバの背に揺られても壊れないスーツケースというとまず思い浮かぶのがゼロだった。リモワも考えたけど、ゼロのカメラケースを以前から使用していたし、ある尊敬する考古学者が現場でランクルの荷台に傷だらけのゼロのケースを乗せている姿が記憶に残っていた事もあってこちらを選んだ。
この129cは機材コンテナ/カメラケースとしてラインアップされているモノで、ゼローラー等のいわゆるスーツケースではない。エグゼクティブ向けにデザインされたスーツケースはもちろん使い勝手は良いのだろうけど、ローラーや引き手など壊れる可能性のある部品に不安が残る。旅先でそういったパーツが壊れると非常に困った事になる。その点これはただのアルミの箱、といったシンプルさで、まず壊れるような物はついていない。20x29x10インチなので大きめのスーツケースと同じサイズではあるが、外付けのカートを使えば使い勝手は同じだし、壊れても現地調達できるだろう。
ただ機材ケースなだけあって、中を開けると巨大なフォームが詰まっているだけで仕切りもなにもない(これをカメラやら銃といった機材の形にカットして使う)。フォームを出すとアルミむき出しなので、さすがにこのままではスーツケースとして使えない。ゼローラーの内張を取り寄せる事も考えたけど、真ん中に仕切りがあると寝袋やテントといった装備を入れづらくなるし、ペルー土産のパネトンも入らなくなる。そこでマットとパラシュートクロスで内張を自作した。まだ実際には使っていないので感想はこれから。次の旅にはぜひ持って行こうと考えている。
夜は久々にゆっくりと映画を見ていた。茄子 スーツケースの渡り鳥
。いまさらだけど、やっと見る事ができた。ずっと見たかったのだけどさすがにボストンでは手に入れるのが難しかった。前作の"アンダルシアの夏"にすっかりはまっていたのだけど、今作もかなり楽しめた。
前作では主人公のノスタルジアをレースの進行とともに描いていたが、今作ではレースそのものにもどっぷりはまる作りになっていた。自転車やレースの描写がさらにリアルになっていて、ジャパンカップのコースはもちろん、ギヤチェンジの瞬間の自転車の挙動、エルゴパワーのグリップなど細かいところまで非常にリアルに描かれている。レーサーの目線からのシーンでは思わず声を上げてしまった。
見ている間とても自転車に乗りたくなり、この冬に組み上げる予定で壁にぶら下げられたままのキャノンデールのフレームに何度も目がいってしまった。手元ではずっとコーラスのレバーをかちゃかちゃと弄りながら。雪が溶けるまでに組み上がるのかな...
前作では主人公のノスタルジアをレースの進行とともに描いていたが、今作ではレースそのものにもどっぷりはまる作りになっていた。自転車やレースの描写がさらにリアルになっていて、ジャパンカップのコースはもちろん、ギヤチェンジの瞬間の自転車の挙動、エルゴパワーのグリップなど細かいところまで非常にリアルに描かれている。レーサーの目線からのシーンでは思わず声を上げてしまった。
見ている間とても自転車に乗りたくなり、この冬に組み上げる予定で壁にぶら下げられたままのキャノンデールのフレームに何度も目がいってしまった。手元ではずっとコーラスのレバーをかちゃかちゃと弄りながら。雪が溶けるまでに組み上がるのかな...

普段自転車に乗るときによく使っているのはボブルビーのMegalopolis。1998年に日本に紹介されたころ、その強烈すぎるインパクトで流行モノで終わるかと思いきや、すっかり定番となっているのはやはりその鞄としての完成度の高さ故だろう。この鞄が出た頃は米国にいて、もちろんこちらでは手に入らないので帰国した機会に真っ先に手に入れたもモノだ。
一体型ABS樹脂ボディは頑強で中身をきっちり守ってくれるが、背面もハーネスもしっかりしているので背負い心地は素晴らしく、ぴたりと背中に張り付いてくれる。ラップトップをベルクロで固定するポケットがあり、僕のThinkPadはもちろん問題なく飲み込んでくれる(小型のXだし)。さらにデジ一眼からレンズ、外付けHDや本を数冊といろいろと放り込んでも、フラップで簡単に閉じ込められる。もちろん、ハードシェルなので変形して荷物を収納してくれる事はないけれど、ストラップで引っ掛けるだけなので意外とパッキングに神経質になる事はない(僕はトートバックのように気楽に放り込んでいる)。
メッセンジャーバックとしてデザインされた鞄も使っているけれど、自転車で派手に転んだ時の事を考えるとラップトップやカメラを持ち運ぶのにはちょっと不安がある。ボブルビーだと持ち主がどうなろうと、まあ機材は確実に守ってくれそうだ。さらに気に入っているのは殆どのパーツが購入可能で、自分でカスタマイズしたり交換修理したりできる事だ。シェルやハーネスもまるで自転車の部品を弄るように交換出来る。
ボブルビーは街中ではよく使っているのだけど、一度も南米への調査旅行に持って行った事はない。過酷な環境で行われる事が多い発掘調査では、ラップトップやカメラなどを持ち運ぶ鞄選びは非常に大事だ。機動力がありながら中身をきっちり保護してくれるボブルビーはたしかに調査旅行に良いだろうけど、やっぱり目立ちすぎる。自然環境も過酷だけれど、治安も良いところばかりではないので、ここまでインパクトが強いと首閉め強盗やらのターゲットになりやすいような気がしていた。そんなわけでずっと街専用にしていたのだけど、驚いた事に僕の友人の考古学者はペルーの現場でも使っているという。”狙われなかったか?”と聞くと”別になにも問題もないよ”との事。ちょっと不安もあるけど、次の調査旅行で使ってみようかと思っている。
BOBLBE-E MEGALOPOLIS他
昨夕は建築の大事なプレゼンがあり、しばらく忙しい日々が続いていた。プレゼンは無事好評を得られたのだけど、そろそろ徹夜はつらい。体力には自信があるのだけど...
ボストンは朝から雪。午後から吹雪になるらしく学校やらは休みになっているようだ。昨夕までの疲れも抜けていないので一日休みたかったのだけど、考古の仕事もおしているのでソレルを履いて雪の中スタジオへ。途中ミーティングのため吹雪の中ハーバードまで行く。大学のブックストアでいろいろと本を漁った後スタジオへ戻った頃にはもうすっかり暗くなり、吹雪もかなりひどくなっていた。今日はもう帰ってゆっくりするか、と荷物をまとめているところへ友人から電話が入り、Alfred Brendel のコンサートのチケットが余ってる、ただし開演まで一時間との事。大急ぎでアパートに着替えに戻る。
吹雪の中にもかかわらず、ボストンシンフォニーホールにはたくさんの聴衆がつめかけていた。彼が今年を最後に引退を表明しているとのことで、もうライブで聴くのは難しいとか。一気に引き込まれる演奏で、最後のシューベルトのソナタまであっという間だった。なんだかちょっとリセットされたような気分を味わった。スタンディングオベーション、頭上拍手、ホール中が桁外れに感動しているのが伝わってくる。”何故引退?まだまだ弾けるじゃないか”と友人が言っていたが、絶頂期のうちに引退する事を考えていたそうだ。いろいろと考えさせられる。
ボストンは朝から雪。午後から吹雪になるらしく学校やらは休みになっているようだ。昨夕までの疲れも抜けていないので一日休みたかったのだけど、考古の仕事もおしているのでソレルを履いて雪の中スタジオへ。途中ミーティングのため吹雪の中ハーバードまで行く。大学のブックストアでいろいろと本を漁った後スタジオへ戻った頃にはもうすっかり暗くなり、吹雪もかなりひどくなっていた。今日はもう帰ってゆっくりするか、と荷物をまとめているところへ友人から電話が入り、Alfred Brendel のコンサートのチケットが余ってる、ただし開演まで一時間との事。大急ぎでアパートに着替えに戻る。
吹雪の中にもかかわらず、ボストンシンフォニーホールにはたくさんの聴衆がつめかけていた。彼が今年を最後に引退を表明しているとのことで、もうライブで聴くのは難しいとか。一気に引き込まれる演奏で、最後のシューベルトのソナタまであっという間だった。なんだかちょっとリセットされたような気分を味わった。スタンディングオベーション、頭上拍手、ホール中が桁外れに感動しているのが伝わってくる。”何故引退?まだまだ弾けるじゃないか”と友人が言っていたが、絶頂期のうちに引退する事を考えていたそうだ。いろいろと考えさせられる。

グランテトラの水筒はとても気に入っているけれど、街で持ち歩くにはちょっと無骨すぎるので普段使えるような水筒を探していた。アメリカ人の学生はよくナルジェンのボトルをキャンパスで持ち歩いているけれど、調査現場やスポーツジムならともかく、普段持ち歩きたいデザインとは言い難い。
そんな時、イースター島で出会った旅人が腰にぶら下げていたのがこのSIGGの燃料ボトル型の水筒だった。アルミのコンテナはとても軽く、頑丈で、シンプルな形はフィールドでも街でも使えそうだった。一目見て気に入って探してみたのだけど、当時(90年代)米国ではSIGGの商品は殆ど手に入らなかった。同じ頃ファイヤージェットも探していたのだけど、これも入手出来なかった記憶がある。結局イギリスに行ったときにヨークのアウトドアショップで見つける事ができた(今では米国でも簡単に入手できるようになり、持ち歩いている人も見かけるようになった)。
ORが丁度良い大きさのケースを出していたので(やはり燃料ボトル用だろうか?)、これに入れて鞄やベルトからぶら下げられるようにして毎日のように学校やオフィスで使っている。もちろん、ペルーの現場でも使っていた。とにかく軽量なので持ち歩くのが気にならず、他のボトルと比べてスリムなので鞄にもしまい易い。アルミボディは薄くてへこみやすいけれど、その分愛着が増してくる。キャップをすぐに無くしてしまいそうで気になるが、最近はバイク用のボトルのようなスナップで開けられるキャップも別売りしているようなのでこれも近く試してみたい。グランテトラと合わせて、長く使っていけそうだ。
(SIGG(シグ) トラベラースイスクロス1.0L 1.0L レッド

グランテトラやSIGGは普段持ち歩くので、邪魔にならない0.75Lのサイズを使っている(酒のボトルがちょうど一本入るので便利でもある)。ただ場所によってはこれらのボトルでは足りない場合もある。もともと0.75Lは一日分としては少ないが、普段旅しているときや調査現場にいるときは無くなれば補給出来るので問題はないのだけど、水筒を空にしたくない環境や、補給が難しい状況もある。
世界で最も乾燥した場所であるアタカマ砂漠では、測量機材を担いで一日中うろつく事もあるが、水分補給はかなり大事だ。自分が感じているよりも早く水分と塩分を失っていくので規則的に(飲みたくなくても)水分を取るようにしないと大変な事になる。初めて現場にくる学生には予め注意しておくのだけれど、水分補給を忘れて熱中症になってしまう人はよくいる。またアマゾンのジャングルを丸一日歩いた時には、途中水場はあるようだったので1L程しか用意しなかった。あまり荷物を重くしたくなかったというのもあるが、補給用に浄水ピルだけを持っていった。いざ川を見つけると、その地域の水はミネラルが多すぎて沸かさないと飲めないとかで現地スタッフに止められて補給出来なくなり、えらい目にあった事も有る(ミネラルは浄水ピルではどうしようもない)。こういう現場では、水筒一本では全く足りないのでNalgeneのボトルや、MSRのDromedary Bagと併用している。
MSRのDromedary Bagは軽量で、使わない時にはたたんでしまっておけるので予備にバックパックの中に入れておく。パッカーに定番のNalgeneは随分長い間使っているが、最近ではこの乳白色のモデルは見かけなくなった。これに銀色のダクトテープをぐるぐる巻いて使っているパッカーがよくいたが、最近ではそういうむさ苦しい(?)技もあまりやっている人はいないようだ。
(nalgene(ナルゲン) カラーボトル 1.0L ルビー

調査旅行のとき、水筒は状況に合わせて使い分けるので何種類かをバックパックに放り込んで行く。このグランテトラは一番付き合いが長く、高校生の頃から愛用しているもの。エナメル•グラスティック加工された内面は嫌な匂いもつかないし、水やワインの味を変えることもない。これは0.75Lの、丁度酒のボトルが一本入るサイズのもので、いつも鞄の中に入れて持ち歩いている。旅する時には必ず持って行くので、砂漠やらジャングルやらいろんなところで投げられたりぶつけられたりして傷だらけでこぼこになっているけれど、それは旅の記憶を共有してくれているものとしてますます手放せない。現場に出るときは、最近では若干軽いSIGGのアルミボトルを腰にぶら下げている事が多いけど、酒コンテナとして活躍してくれている。

南米の調査旅行やバックパックの旅に出かけるときに必ず持っていくのがパッカーには定番のこのオピネルのNO9。木のハンドルと炭素鋼のブレードをリングで固定するだけの、シンプルなサヴォアの農村で使われている伝統的なナイフだ。高校生の頃にトレッキングに行くときに入手したように記憶しているが随分長い間使っているので定かではない。米国や日本の街中では無用のトラブルになる事があるので持ち出す事はないけれど、旅しているときには大抵ポケットに入っている。
丸く削られた木の柄はしっとりと手になじみ、とても軽いので持ち歩いていてもあまり気にならない。調査地で、昼食のパンやチーズを削るときにはもちろん、ロープや木を切るときにも活躍してくれる。たまねぎやトマトを手にもったままオピネルでみじん切りにして、缶詰のサーディンとレモン汁やオリーブオイルをシェラカップの中でかき混ぜてつまみを作るのは、アタカマ砂漠で夜に調査の仲間達と焚き火を囲んでガトーネグロのワインを空けているときに覚えた技だ。ちなみにサーディンの缶さえもオピネルでがりがりと切って空けてしまうが、これはチリの調査地の村のおばあさんに教えてもらった技。
炭素鋼のブレードは簡素ではあるけれどきちんと研げば素晴らしい切れ味があり、ちょっとタフな使い方にも十分耐えてくれる。ペルーの農夫に売ってもらったうさぎを捌いた事もあるし、チリ軍の友人とリャマを狩ってバーベキューをしたこともある(もちろん狩るのはオピネルではなく銃だけど)。友人はこれ一本で巨大なリャマをするすると捌いてくれ、見ていて惚れ惚れとする手技だった。魚を捌くのはちょっと自信はあるけれど、さすがにこれは見とれているしかなかった。
ガーバーのマルチプライヤーなど、もっと現代的な、あきらかに頑丈で使い勝手のよいナイフもいろいろと使っているけれど、この簡素なオピネルが一番稼働率が高いかもしれない。長くつかっているとブレードががたついてくると聞いたけれど、今のところなんの問題もなく使えている。何度も修理したり買い換えたりして使い続けていきたいナイフだ。もちろん、ラブレスのダブルヌードのドロップハンターのような業物を腰に下げて現場にでるのも憧れるけれど、それでも、やっぱり素朴なオピネルはポケットに入っているのかもしれない。
(キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) オピネル フォールディングナイフNO.9(ストッパー付)

このところメインカメラにしているのはハッセルの500C/M。建築を始めてから考古学だけをやっている頃とはカメラの使い方が少し変わってきた。建築物やインテリアを撮ったりする機会が増えたし、デザインをやっている人間関係の中で簡単な出版用の写真を頼まれるような事もある。フィールドだと頑丈さと機動性を重視していたけれど、スタジオで三脚を立ててじっくりと撮るようなカメラも必要になってきたわけだ。
僕がボストンに来た頃はデジタルと銀塩が本格的に入れ替わってきた中途半端な時期で、新たにカメラを選ぶのはちょっと難しかった。近い将来デジタル一眼レフがメインになるのは目に見えているけれど、写真の質はまだまだ銀塩の方が良かった。高画質のプロ用デジタル一眼レフはあるけれど、高価すぎたし、中級機を買うならフィルムをスキャンした方がよかった。この機にデジタルに完全移行覚悟を決めるのか、もう一度銀塩カメラを買っておくのか、といった頃だった。
結局、最後の銀塩カメラのつもりで、長く使って行けるなにか決定的なモノを買おうという事にした。F6も考えたけれど、せっかくだから中判以上で、ずっと整備して使い続ける事の出来るマニュアルのカメラにしようと選んだのが500C/M。中判カメラでは定番中の定番のハッセルブラッドの、フルマニュアルカメラだ。潔い6X6の正方形フォーマットで、露出計もついていないが、nFM2でもライカでも普段はGOSSENの単体の露出計を使うので同じ事だ。これまでハッセルを使っていたプロカメラマン達がデジタルに以降しているので中古市場もかなり豊富でレンズや部品を揃えるのも難しくない。一本目のレンズはスタジオ撮影を想定して、ゾナーの150mmを選んだ。
もともとスタジオでじっくり撮るつもりで手に入れたのだけど、頑強なボディは過酷なフィールドでがんがん使うのにも向いている。シンプル極まりない構成で作法さえ間違えなければ壊れるような事もない。以前マチュピチュを訪れた時、肩から2台のハッセルをがらがらとぶらさげて撮影をしていた猛者と会った事もあった。データは中判フィルムをスキャンできるエプソンのスキャナーを使い、デジタルで整理している。フィルムカメラのメイン機材として、スタジオで、フィールドで、長く使って行くことができそうだ。

ちょっと街でスナップをするときやパーティで友人を撮ったりするときにはデジカメを使う事が多くなったけれど、以前はポラロイドをよく使っていた。まるっきりカメラに見えない佇まいは被写体を緊張させないという点でスナップ撮影にはとてもよい。革張りの、クロームボディのファインダーを持ち上げ、正方形のフォーマットを覗き込んでマニュアルでフォーカスを合わせる、一連の儀式のような作法も楽しく、独特の淡い描写も気に入っていた。メインの銀塩カメラにハッセルブラッドの500CMを使っているけれど、正方形のフォーマットの楽しさに触れたのはSX-70が最初だった。
今では専用のフィルムを見つける事は難しく、600フィルムのツメを削って使う事になる。描写がちょっと変わってしまうけれど、何しろ僕と同じ歳のカメラだししかたがない(最近SX-70 BLENDフィルムというものがあるそうだけど、これはまだ試していない)。最初に手に入れたのはシンプルな初代LAND CAMERAで、いつも手に届く机の上に置いておいてよく使っていた。ある時たまに自分も被写体になりたくて通りすがりの学生にシャッターを押してもらった際、フィルム排出口に指がかかっていて(SX-70はちょっと思いもかけない隙間から写真が出てくる。ちゃんと説明していなかった僕が悪いのだけど...)モーターの歯車のひとつかふたつ外れてしまったようで壊れてしまった。どうも直すのは難しいようで、その後二台目のALPHA1を手に入れた。これは初代モデルに三脚穴とストラップを追加したモデルだ。
ちょっとメモ代わりに、といったポラならではの使い方や、パーティでのスナップなど、さすがにデジタルの便利さには負けてしまう。最近稼働率はめっきり減ってしまったけれど、たまに欲しかったモノを買った時に記念撮影をする時なんかに使っている。もう何台か手に入れて、黒革やハラコに張り替えて靴や鞄に合わせるような使い方もしてみたい。もうちょっと気楽にフィルムが手に入れられるといいんだけど。

ブエノスアイレスを訪れた時に出会ったカメラだ。街中でスナップをするのに使えるカメラがないかと中古カメラを探しているときに見つけたものだ。nFM2は砂漠やジャングルの中で使うのには問題はないけれど、ちょっと治安の悪い街だと目立ちすぎる事もあった。バルナック型の頂点ともいわれるこのIIIfはあまりに美しく、スナップ用という当初の目的に合っているかどうかなんてもうどうでもよくなり、殆ど一目惚れのような状態で入手した。
ズミクロンの5cmとM型用のMCメーターも一緒に入手したのだけれど、レンズの状態があまりよくなかったのでその旅では本当に気楽なスナップ用以上には使えなかったが、それでも嬉しくて毎日鞄の中に入れて出歩いていた。その後90mmエルマーやビドムファインダーなんかも手に入れてたまに持ち出して使っている。まだちゃんと整備していないのでその実力は確かめていないけれど、近く生き返らせてあげたいと思っている。
その夏はペルーで発掘調査に参加した。現場に遺物の撮影に来られていたプロカメラマンの方が僕のIIIfを見て、ちょっと嫌な顔をして”何、君は写真が好きなの?カメラが好きなの?”と言われたのをまだ覚えている。当時僕はライカと言えば”ドイツの職人の手によるとんでもなく素晴らしいカメラ”という程度の認識しかなく、だからこそ古くてもすばらしい描写をしてくれるだろう、整備して長く使えるだろうという程度に考えていた。だがライカファンにはコレクターも多く(フィルムをカメラに入れる事の無いような)、そういった印象を与えたのかもしれない。もちろんカメラにはコレクションアイテムとしても魅力はあるし、そんな事は個人の趣味の問題でどっちでもいいじゃないかと思うんだけど、仕事道具としてカメラを扱う写真家とはお互い不可侵の領域に存在しているのだろうか。

_アマゾン川にて/Nikon nFM2 w/Ai Micro Nikkor 55mm
旅の記録や調査の記録に写真は大事なメディアだし、デザインをやっている関係で仕事で写真を撮る機会も多く、僕にとってカメラは結構な存在感を持っている。最近ではデジタルカメラも使うようになったけれど、棚に並んでいるのは殆どマニュアルの銀塩カメラだ。中学生の頃に父から借りたFGで写真の勉強を初めてから主にNikonを使ってきた。
その後渡米する際にnFM2を贈ってもらい、Micro Nikkor 55mmと共にメインカメラとして南米やらヨーロッパやらずっと一緒に旅してきた。頑丈そのもので、ベネスエラのロライマ山で首から下げたまま雲の中を登り続けてびしゃびしゃになったり、炎天下のアタカマ砂漠で砂にまみれたり、雪のチロエ島で横転事故を起こしてピックアップトラックの中を転げ回ったりと、結構無茶な使い方をしてきたけれど、一度も裏切られた事はなかった。F3HPを使ってみた事もあったし(一年だけ使ってアレキパで盗難)、FM3に浮気したくなった事もあるけれど、10年以上いろんな所に旅をした記憶を共有していて、すっかり手になじんでいるこのnFM2は一番大事なカメラの一つだ。
デジタルに移行した人が多いためか、中古品が整備費より安いくらいで手に入るけれど、買い替える気にはなれない。隅々まで砂が浸透してしまい、露出計も動かなくなってしまっったので、ニコンセンターで徹底的に整備してもらい今は日本で休息中。

学生の頃は全寮制だったので三食カフェテリアで食事をしていたけど、ボストンに来てからは自炊の生活だ。パスタを茹でて簡単に済ませる事が多いけれど、たまに食材を仕入れて日本食を作ったり、ペルー料理を作ったりするのは良い気晴らしになる。友人達と集まってパーティをする時にはちょっと気合いを入れて作ってみたりする事もある。
包丁は普段はヘンケルの牛刀と、有次の一尺を愛用。”西の有次、東の正本”なんて言い方もあるようだけど、まあ京都に住んでいた事もあるし、有次を手に入れる事にした。もちろん、僕の名前を彫ってもらって。友人の日本人留学生やその友人達が集まって、ちょっといい魚を手に入れて(ボストンではその気になれば築地直送の魚だって手に入る)スシパーティをする時にも活躍してくれる。有次は創業1560年、日本ではサムライ信長がいて、ペルーではインカがスペインに戦いを挑んでいた時代だ。これはそんな時代から受け継がれた、サムライの刀と同じ技術で作られた包丁だよなんて話をしながら切り付けたりしていると、米国人のゲストなんかは特に喜んでくれる。柳刃は日本人には見慣れているけれど、彼等には刀みたいな迫力があるかもしれない。手ぬぐいに巻いた柳を出して、白木の鞘を払って一尺の柳刄をまな板の上に置くだけでもちょっとした緊張感が漂う。パフォーマンスがてらキュウリの桂剥き(米国のキュウリは特大なので、巻物の時には桂剥きにして打つ事もある)をしたり。結局メインはカリフォルニアロールや、ボストンロールなんだけどね。切れ味はさすがなもので、キャタピラーロールのアボガドを透けるくらいに薄く切る事だって出来る。使い方を間違えているかな...
魚を捌くのはヘンケルの牛刀で代用しているので、次に日本に行く機会があれば有次で出刃も是非手に入れたいな。あと、薄刃と小出刃も。自分の厨房を設計するなら、パーティ用にスシバーも作って、ネタケースも入れて、包丁の収納も作り付けで..なんて妄想しながらの自炊生活。

フィールドノートと合わせて常に持ち歩いているのはLAMYのサファリか、フィッシャーのスペースペンだ。もちろんスケッチをするときや測量図面を描くためにステッドラーやロットリングのリードホルダーや鉛筆も使っているのだけど、普段はこれらのペンがMOLESKINと一緒にポケットに入っている。
スペースペンはその名が表すように、NASAの宇宙飛行士が使っているペン。カートリッジ内部に窒素ガスが圧入してあり、無重力状態だろうが水中だろうがどこでも使えるように設計されている。さらに-50から200℃まで対応しているので気圧も温度も気にする必要も無い。炎天下のアタカマ砂漠だろうが標高5000mのアンデス越えだろうがなんの問題も無く使える。シンプルな鏡面仕上げのボディは十分に頑丈で、掌に隠れる程の大きさなのでMOLESKINといっしょにポケットに入れている。結構長い間愛用しているけれど、その宇宙船のようなデザインのお陰でポケットから滑り落ちる事もよくあり、これで三代目になる。このモデルには最近は着脱できるクリップが付いてくるようだが、あった方が良いかもしれない。
もう一本愛用しているのが、以前調査に向かう時に友人が贈ってくれたLAMYのサファリシリーズ。ABS樹脂製で軽くて頑丈。LAMYのローラーボールの滑らかな書き味は素晴らしく、バランスがよく持ちやすいので長時間書いていても疲れないのでかなり気に入っている。ただ、フィールドで使うには要注意で、ある時作業中に雨が降り出した事があった。 ”あ...!”と気付いた時には遅く、記録していた大事な測量データがどんどん溶けて流れていった。そう、これは水性の、ローラーボールだったんだ。もちろん、このペンが悪いのではなくて僕が間抜けだったんだけど。このペンは室内で日誌を書くときなどに使っている。
(LAMY/ラミーサファリ スケルトン M(中字)
(フィッシャースペースペン AG-7

RHODIAはページ毎に切り離す事ができ、そこが便利ではあるのだけど、強度的な弱点でもある。タフな使われ方をする現場では長く使っているとだんだんバラバラになってしまう事がよくあった。また表紙が厚紙なので痛むのも早く、ボロボロのノートでは街中で使う時や先生方の前で取り出す時にはちょっと気になる。RHODIAには革やコーデュラ•ナイロンの専用のカバーがいろいろと出ている。その時々の服装や靴、財布などの小物に合わせて着替えられるのは素晴らしいし、一度使ってみたいと思っている。ただ街で使う分には良いけれど、フィールドでは頻繁に使うものだしすぐに開いて書き込めないといけないので、ちょっと煩わしい。
そんなわけで、最近ではMOLESKINのスケッチブックを使っている。オイルクロスの固い表紙は強度に申し分なく、片手で持って書き込むのに適している。ポケットに入れるに丁度よい大きさで、ゴムバンドで閉じるのですぐに開ける事ができる。栞もついているのでページにアクセスもしやすいし、裏表紙のポケットにはその日もらった名刺やチケットなどをしまっておける。
もちろんフィールド•ノートとしてだけでなく、ボストンにいるときは建築のスケッチブックとしても使っている。建築家やデザイナー、学生にも人気があって、一度教室で見回すと半分ちかい学生がMOLESKINを使っていた事もある。デザインのアイデアやメモ、スケッチなどを書き留めるのにいつも持ち歩いているわけだ。建築のスタジオの教授の中にはスケッチブックを評価の対象にする人もいる。学生が普段どれだけ課題のデザインについて考えているかを審査するのだ。スケッチブックとしてはプレーンがよく使われているようだが、僕はRHODIAの頃から慣れているので引き続き5mm方眼のスクエアードを使っている。一度教授に指摘されたけれど、こういうモノは慣れだからしかたがない。
昨年ペルーでの調査にも使ったが、ジャングルの雨の中なかでもへこたれる事無く、ポケットの中でその固さがとても頼もしかった。ちなみに、インディ•ジョーンズが映画の中で使っているのもこのMOLESKINなのだけど、べつにそんなシーンに影響された訳では、たぶん無い。

フィールド調査をする際、常に手もとから離す事なく持ち歩くフィールド•ノート。現地で集めた情報や測量などのデータから、調査旅行の細々とした記録、研究アイデアのメモなどをどんどん書き込んで行く。現場の雨、雪、砂に耐え、幾度となくポケットや鞄から出し入れされてもへこたれないように頑丈で、片手で持って書く事ができ、常に持ち歩くのに適切なサイズ、重さでなければならない。慎重に選ばないといけない大事な調査の装備の一つだ。
ペルーでお会いした、日本の調査隊の方々の多くはフィールドワーカーには定番のコクヨの野帳 (セ-Y3)を使っておられた。草色のハードカバーの野帳をゴアテックスのジャケットの内ポケットから取り出して、3mmの方眼になにやらデータを書き込んでいる姿はいかにも調査者の姿である。一度日本の大学の研究室を訪れた時には、以前発掘隊の御用達だった特注の、布張りの、名前入りのフィールド•ノートを見せていただいた事がある。経験の中で出された答えとしての、カスタムメイドのノートは非常に存在感があった。残念ながら最近では使っておられないようだったが、僕もいつかそんなノートを作ってみたいと感じた。
米国の調査隊ではとくにコレといったものを観察する事はできなかった。皆それぞれに選んだノートを使っていたようだが、同じモノを毎年選んでいるというようでもなかった。あまり拘らない米国人らしいのかもしれないが、こういったモノを見つけることに喜びを感じる僕にはちょっと残念だった。強いて言えば、大学のブックストアで売っている、化学実験室で使う方眼ノートを使っている人が多かったか。もしかしたら他にもあるのかもしれないのでまた機会があれば観察してみたい。
僕が学生時代使っていたのはロディア/メモ帳 NO.14
(ロディア/メモ帳 NO.14

見ているだけでも楽しくなる美しいステム。結構懐かしい物ではある。以前京都でお会いした建築家さんが使っていたチネリのピスト(ヴィゴレッリだったろうか)にくっついていた。かなりのインパクトがあるデザインで、使っている人物の魅力と合わせて記憶にずっと残っていたモノだ。是非一度使ってみたいと思っていたのだけど、GTのピストを入手したときにその色やデザインからこれは似合うだろうと思い探し出した。Rev-Xとも相性が良さそうだし。
重くないかとか今更とか、同じ値段でカーボンステム譲ってあげるよとか周りにいろいろ言われたけれど、元から性能云々ではなくて、ちょっとよく説明できないところで欲しいと思っていたものだから仕方ない。
GTのフォークはスレッドなので1"-1"のステムアダプタを使うか、フォークとヘッドセットをスレッドレスに換えなければならない。ついでにカーボンのフォークに換えようかなとも思っているけど、1"のフォークは最近あまり見かけないな。どうしようかなと思いつつ、昨年の秋に入手してからずっと机の上に文鎮のように佇んでいる。まあ少なくとも酒の肴としてはすでに十分に元を取っている。
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