
長かったボストンの冬もようやく終わり(といっても今外は5℃だけど)、やっと自転車に乗れる季節になった。冬の間に完成させる予定だったキャノンデールのCAAD5は壁にぶらさがったきりで、すっかりオブジェになってしまっているけれど、GTのピストを久々に乗り回したい。
さて、GTにはフロントブレーキをつけているのであまりハードなスキッドなんぞをすることもないけれど、バックを踏む事はあるし引き足も使いたいので、パワーグリップというストラップを使っている。これは足を入れてひねるだけで固定される優れもの。クランクブラザーズのエッグビーターも試してみたいけれど(これはボストンのメッセンジャー達にも結構使っている人がいる)やはり街乗りなので普通の靴も使えるほうが便利だ。
あまり本格的なサイクリングシューズを使うことは無いけれど、これは冬の間に手に入れた古いデットピエトロのサイクリングシューズ。7、80年代にバイクに乗っていた人には懐かしいモノかも。ミラノで作られた美しい細身のレザーシューズで、通気のためのパンチングがとてもセクシー。なんとレザーソールだったのだ。カーボンソールとはいかないけれど、内部にベースが入っているのか剛性も高い。つま先からシューレースで編み上げるのでフィット感は高く、履き心地はもちろんレーシングシューズのそれである。
専用のプレートも探せば手に入るのかもしれないけれど、ヴィンテージのペダルやトゥクリップやらを探す旅が始まりそうなのでここは自制。ちょっともったいないけれどソール保護に薄いラバーソールでも貼り付けてこのままパワーグリップで使おうと考えている。こういうシューズを手に入れるとRAPHAのウェアやらヴィンテージのカンパのジャージなんかで合わせたくなるところだけど、GTのイメージからは遠くなってしまうな。やっぱりオールドイタリアンバイクが似合うのだろう。

普段自転車に乗るときによく使っているのはボブルビーのMegalopolis。1998年に日本に紹介されたころ、その強烈すぎるインパクトで流行モノで終わるかと思いきや、すっかり定番となっているのはやはりその鞄としての完成度の高さ故だろう。この鞄が出た頃は米国にいて、もちろんこちらでは手に入らないので帰国した機会に真っ先に手に入れたもモノだ。
一体型ABS樹脂ボディは頑強で中身をきっちり守ってくれるが、背面もハーネスもしっかりしているので背負い心地は素晴らしく、ぴたりと背中に張り付いてくれる。ラップトップをベルクロで固定するポケットがあり、僕のThinkPadはもちろん問題なく飲み込んでくれる(小型のXだし)。さらにデジ一眼からレンズ、外付けHDや本を数冊といろいろと放り込んでも、フラップで簡単に閉じ込められる。もちろん、ハードシェルなので変形して荷物を収納してくれる事はないけれど、ストラップで引っ掛けるだけなので意外とパッキングに神経質になる事はない(僕はトートバックのように気楽に放り込んでいる)。
メッセンジャーバックとしてデザインされた鞄も使っているけれど、自転車で派手に転んだ時の事を考えるとラップトップやカメラを持ち運ぶのにはちょっと不安がある。ボブルビーだと持ち主がどうなろうと、まあ機材は確実に守ってくれそうだ。さらに気に入っているのは殆どのパーツが購入可能で、自分でカスタマイズしたり交換修理したりできる事だ。シェルやハーネスもまるで自転車の部品を弄るように交換出来る。
ボブルビーは街中ではよく使っているのだけど、一度も南米への調査旅行に持って行った事はない。過酷な環境で行われる事が多い発掘調査では、ラップトップやカメラなどを持ち運ぶ鞄選びは非常に大事だ。機動力がありながら中身をきっちり保護してくれるボブルビーはたしかに調査旅行に良いだろうけど、やっぱり目立ちすぎる。自然環境も過酷だけれど、治安も良いところばかりではないので、ここまでインパクトが強いと首閉め強盗やらのターゲットになりやすいような気がしていた。そんなわけでずっと街専用にしていたのだけど、驚いた事に僕の友人の考古学者はペルーの現場でも使っているという。”狙われなかったか?”と聞くと”別になにも問題もないよ”との事。ちょっと不安もあるけど、次の調査旅行で使ってみようかと思っている。
BOBLBE-E MEGALOPOLIS他

見ているだけでも楽しくなる美しいステム。結構懐かしい物ではある。以前京都でお会いした建築家さんが使っていたチネリのピスト(ヴィゴレッリだったろうか)にくっついていた。かなりのインパクトがあるデザインで、使っている人物の魅力と合わせて記憶にずっと残っていたモノだ。是非一度使ってみたいと思っていたのだけど、GTのピストを入手したときにその色やデザインからこれは似合うだろうと思い探し出した。Rev-Xとも相性が良さそうだし。
重くないかとか今更とか、同じ値段でカーボンステム譲ってあげるよとか周りにいろいろ言われたけれど、元から性能云々ではなくて、ちょっとよく説明できないところで欲しいと思っていたものだから仕方ない。
GTのフォークはスレッドなので1"-1"のステムアダプタを使うか、フォークとヘッドセットをスレッドレスに換えなければならない。ついでにカーボンのフォークに換えようかなとも思っているけど、1"のフォークは最近あまり見かけないな。どうしようかなと思いつつ、昨年の秋に入手してからずっと机の上に文鎮のように佇んでいる。まあ少なくとも酒の肴としてはすでに十分に元を取っている。

後輪はMicheのハイフランジハブにVelocity Deep-Vという事を考えていたのだけど、壁にぶらさげたGTを眺めているとこの黒いフレームを緊張感のあるカーボンブレードの前後輪で揃えたところをみたくなり、中古で後輪のRev-Xを探し出して購入した。
ただロード用ハブをピスト用に改造する必要がある。改造する方法はいくつかあるようだけど、今回はSurlyのFixxer というハブコンバーターを使う事にした(スポークの調整が出来ないRev-Xでは他の方法は無いと思うのだけど、あるのかな)。シングルスピードを初めとしてシンプルで実用本位な自転車を作るSurlyにはカルト的な人気があり、ボストンでもよく見かける(ちょっとヒッピーっぽい人が多いかな)。日本にもSurlyを紹介するショップがあり多くのファンがいるようだ。このFixxerはシマノ製のフリーを使ったハブをフィクストギアにしてしまう強引なキットで、お気に入りのホイールをそのままピストに使えてしまえる(一部サイレントクラッチや古いデュラ等対応しないものもあるようなので要注意)。
キットはシャフトやコーン、スペーサー等、必要な部品が入っていて、120,125,130,135と一般的なエンド幅に対応できるようになっている。えらくぶっきらぼうな文章の説明書が一枚入っているきりだけど、シマノのフリーとシャフトを交換するだけなのでそんなには難しくはないはずで、ハブの手入れ等をやった事がある人なら30分もかからずに交換できる。手こずったのはFixxerではハブの左側(ドライブトレインの反対側)は既存のベアリングコーンをそのまま使用する事でシャフトを固定する事になっているのだけど、Rev-Xはシールドベアリングなのでコーンが無い事。ベアリングの内径とFixxerのシャフト外径も違う。外したRev-Xのシャフトはステップ式に直径が変わっていて、このオリジナルのシャフトでないと固定しないようだ。確かにオリジナルのシャフトをFixxerと組み合わせることは出来るけれど、それではエンド幅を120mmにする事ができないしクイックのスキュアーしか使えなくなるのでピストエンドには不向きだ。
結局シールドベアリング用のスリーブを探して、さらにそのスリーブの外径に合ったベアリングに交換するしかないようだ。部品はすでに手に入れたので近く交換予定。今の所はあるメッセンジャー氏から教えてもらった裏技で無理矢理固定して乗っている(安全とは思えないので紹介は出来ませんが)。

ボストンの冬はかなり冷え込む。−10℃まで下がる事もざらにあり雪に閉じ込められて自転車に乗る機会は少なくなるけど、暖かい部屋の中で酒を飲みながら弄っているのも楽しく、暗鬱な外を忘れさせてくれる。先日GTのピストのホイールを入れ替えた。もちろん外は雪なのでまだ殆ど乗っていないけれど。
Rev-Xという90年代に一世風靡したスピナジーの名作で八枚の薄いカーボンブレードの緊張感のある佇まいには惚れ惚れとしてしまう。ずっと憧れていたのだけどこのホイールの全盛期には全寮制の大学にいて自転車には乗っていなかったので購入には至らなかった。その攻撃的なデザインがうけるのかメッセンジャー達の間でも前輪に使用している人をたまに見かける。このRev-Xが中古で売りに出されているのを見つけて、さっそくGTに履かせてみた。
スピナジーではこのモデルは99年に生産を中止していて、現在はザイロンスポークというもっとすごいらしい素材でホイールを作っている。カーボンホイールの先駆けとして一時代を築いたRev-Xだけれど、重量的にも性能的にもやはり最新のモデルにはかなわないだろう。またブレードのデザインの問題か今では公認レースでの使用が禁止されているようだし、当時技術が新し過ぎたためか強度に不安があるという話もある。そもそもカーボンって経年劣化するんじゃなかったかな。とはいえ街乗りにはまず問題はないだろうしやっぱり長年のあこがれのホイールが使えるのは嬉しい。
GTの黒いトリプルトライアングルとあいまって緊張感を増して気に入っている。幅広のブレードが風をはらむようでチャールズ河のMass. Av.の橋の上で横風にあおられてちょっと驚いたけど直進はかなり気持ちがよい。Rev-Xはフレキシブル過ぎる、という意見もあったけど、もともとガッチガチのアルミ+3三角のGTではちょうどいいのかな。雪が解けるまであまり乗る機会もないので感想はまだこれから。






